亜鉛欠乏症

院長の森 維久郎です。

今日は貧血の原因の亜鉛欠乏症について触れたいと思います。

亜鉛欠乏症とは

亜鉛欠乏症とは、血液中の亜鉛が不足することにより様々な症状が起きる病気です。

亜鉛は細胞増殖に大きな影響を与えるため、亜鉛欠乏症は以下のような様々な症状がでます。

  • 皮膚炎
  • 口内炎
  • 脱毛 など

また腸の細胞や味覚の細胞にも影響与え以下のような症状もでます。

  • 食欲低下
  • 味覚障害 など

糖尿病や腎臓病の患者さんでは腎臓から亜鉛の排泄が増えるため不足することが多く、補うことで糖尿病や腎臓病に対する治療にもなるため定期的に測定が必要です。

亜鉛欠乏症の診断

以下の①~④で、①・②・③を満たすと治療適応になります

①・②・③に加えて、④も満たすと亜鉛欠乏症の診断となります。

① 下記の症状/検査所見のうちの1項目以上を該当する

  • 臨床症状:皮膚炎、口腔炎、脱毛症、褥瘡、食欲低下、発育障害、性腺機能不全、易感染状態、味覚障害、貧血、不妊症
  • 検査所見:ALP低値

② ①の症状の原因となる他の疾患が否定される。

③ 血清亜鉛値(早朝空腹時の測定が望ましい)

  • 60μg/dl未満:亜鉛欠乏症
  • 60-80μg/dl未満:潜在性亜鉛欠乏

④ 亜鉛を補充することによって症状が改善する

亜鉛欠乏の原因

亜鉛が不足する理由として以下のような理由があります。

  • 亜鉛の接種不足(動物性タンパク不足、低栄養など)
  • 腸での吸収が悪い(慢性肝障害、炎症性腸疾患、食物繊維の過剰摂取など)
  • 排泄増加(糖尿病、腎臓病・透析などの病気)
  • 薬剤性(ビグアナイド系、アロプリノール、メチマゾール など)

特に腎臓病で行われるタンパク制限によって亜鉛が不足することが多々あります。

亜鉛欠乏症の治療

亜鉛不足で起きる症状+検査所見があれば治療を開始します。

ただし慢性肝疾患、糖尿病、慢性炎症性腸疾患、腎不全などでは、亜鉛投与によりこれらの病気が改善することがあるので症状や診断がなくても治療を検討してもよいとされています。

主に治療としては、食事での補充もしくは薬での補充があります。

① 食事での治療

  • 牡蠣
  • 牛肉
  • 鶏肉
  • 豚肉
  • ごま
  • のり
  • ワカメ
  • 昆布
  • カニ
  • スルメ
  • 白米
  • 納豆
  • ブロッコリー
  • レバー など

② 薬での治療

亜鉛として50-100mg/日を投与することが推奨されています。薬として以下の薬剤を使用することが多いです。

  • ノベルジン
  • プロマック など

薬の副作用としては以下のようなものがあり定期的な評価が必要です。

  • 消化器症状(嘔気、腹痛)
  • 膵酵素上昇(アミラーゼ、リパーゼ上昇)
  • 銅欠乏による貧血
  • 鉄欠乏性貧血 など

亜鉛欠乏性貧血と腎臓

亜鉛欠乏性によって起きる貧血を亜鉛欠乏性貧血と呼びます。

腎臓病の患者さんではHb値を11-13g/dlにコントロールすることで腎臓の障害を抑えることが出来ると言われています。

腎臓病になるとエリスロポエチンという造血に関わるホルモンが低下することで腎性貧血が起きます。

一方で腎臓病になると、亜鉛欠乏性貧血が起きやすくなり、腎性貧血と亜鉛欠乏性貧血が合併することが多いので注意が必要です。

また、亜鉛が不足すると味覚が低下すると言われています。味覚が低下すると塩分を濃くしないと食事に満足できず塩分摂取量が増え、腎臓の障害を進めてしまうことがあります。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました