過活動膀胱とは?
過活動膀胱(かかつどうぼうこう)とは、頻尿の原因の一つで、何度もトイレに行きたくなり、時折トイレに間に合わなくなるような症状がある病気です。
正確な定義としては、「尿意切迫感を主症状として、しばしば頻尿時に切迫性尿失禁を伴う症候群である」とされています。
外来をしていてもよく遭遇する疾患で、日本人には800万人ほどいると言われており、我慢が出来ず漏らしてしまう尿失禁を伴う患者さんはその半分程度と言われております。
過活動膀胱症状
主な症状としては
・頻尿(昼間、夜間)
・尿意切迫感(尿がすぐに漏れそうになる)
・尿失禁(トイレが間に合わない)
などがあります。
過活動膀胱の診断
診断には、問診が一番大切で、以下の項目で点数をつけて該当すれば過活動膀胱の診断となります。
質問1
朝起きた時から寝る時までに何回くらい尿をしましたか?
→0点:7回以下、1点:8-14回、2点:15回以上
質問2
夜寝てから朝起きるまでに何回くらい尿をするために起きましたか?
→0点:0回、1点:1回、2点:2回、3点:3回
質問3
急に尿がしたくなり我慢が難しいことがありましたか?
→0点:なし、1点:週1より少ない、2点:週1以上、3点:1日1回、4点:1日2-4回、5点:1日5回以上
質問4
急に尿がしたくなり、我慢できずに尿をもらすことがありましたか?
→0点:なし、1点:週1より少ない、2点:週1以上、3点:1日1回、4点:1日2-4回、5点:1日5回以上
診断
以下の場合が過活動膀胱の診断となります。
・合計が3点以上(5点以下:軽症、6〜11点:中等症、12点以上:重症)
・質問3が2点以上
ただし、似たような症状で、過活動膀胱と間違えられることもあるので注意が必要で、特に痛みが出るような場合は、間質性膀胱炎や膀胱上皮内癌のような特別な病気のこともあるので、適宜尿検査を行なったりします。
過活動性膀胱の原因
原因は多岐に渡りますが、脳や脊髄損傷の病気で起きる「神経因性(しんけいいんせい)」とそれ以外で、生活習慣病、メタボリック症候群などや、原因不明で起きる「非神経因性」で分けることができます。
過活動膀胱の治療
治療としては、まず生活習慣の改善、行動療法、薬物療法を行ないます。
生活習慣の改善、行動療法
排尿記録
まず、1日の尿の記録をしてもらうため排尿記録という記録をつけて3日間ほどつけていただきます。この排尿記録で明らかに水分が多い患者さんは飲水量を少なくします。
膀胱訓練
その次に、膀胱訓練をします。膀胱訓練は、尿を出すのを少しずつ我慢してもらい、膀胱の容量を増やす訓練です。これにより改善する患者さんも一定数いらっしゃいます。
また骨盤底筋訓練という特別な訓練をすることで、3ヶ月くらいかかりますが、改善を期待することもできます。(Youtube動画はこちら。)
薬物療法
次に薬物療法です。よく使われるのが、抗コリン薬、β3作動薬という2種類の薬です。
抗コリン薬
抗コリン薬は、副交感神経という神経を阻害して膀胱に尿を貯めるようにする薬です。非常に効きが良いのですが、高齢者に対しては効きすぎて尿が出なくなったり、強いと将来の認知症に関連する可能性が指摘されており注意が必要と考えられています。
例)
・ウリトス:効果は短い。口内乾燥などの抗コリン薬に特徴的な副作用が比較的少ない。
・ベシケア:効果は長い。
・トビエース:尿失禁に対する効果が特徴。
・ネオキシテープ:貼り薬。副作用は少ないが、貼った所の皮膚の症状に注意。
β3作動薬
β3作動薬は、膀胱のアドレナリンに関係する場所に作用して膀胱の尿を貯める機能を増やします。抗コリン薬よりは口の渇き、便秘などの症状が少ないのですが、動悸や頻脈などが起きる可能性があるので注意が必要です。
例)
・ベタニス、べオーバ
その他
それ以外にもよく使われる薬として夜間に頻尿がある場合がイミダフェナシなどを検討することもありますし、猪苓湯と呼ばれる漢方で治療することもあります。
日本臨床内科医会から過活動膀胱に関するわかりやすい冊子がPDFで配布されておりますので、ご参照ください。
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