鉄欠乏性貧血

赤羽もり内科・腎臓内科の院長の森 維久郎です。

貧血の中でも一番多い鉄欠乏性貧血について書きます。

鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血とは、鉄が不足することによって、酸素を運搬するヘモグロビンが作られなくなり起きる貧血です。

鉄欠乏性貧血の原因

主に3つパターンがあります。

  1. 出血している
  2. 鉄の必要量が増えている
  3. 鉄の吸収が足りない

出血している原因として消化管出血、子宮筋腫、月経による大量出血などが多いです。

鉄の必要量の増加は妊娠している時や思春期などで起きます。

鉄の吸収不足については、単純に鉄を含む食事を食べていないか、薬などで鉄吸収が阻害されている可能性があります。

鉄欠乏性貧血の検査

血液検査で鉄の評価を行います。

血液中の鉄だけでなく、体内に貯蔵されている鉄を確認するため以下の項目を測定します。

  • TIBC(総鉄結合能)
  • フェリチン など

必要時、便検査・内視鏡・婦人科受診をします。

*細かい話(理解できなくて良いです。)

鉄はトランスフェリンと呼ばれるタンパクとくっついて、運搬されています。このトランスフェリンと結合できる鉄の総量をTIBCと呼びます。

鉄からこのTIBCを割り算した値をTSATと呼び、このTSATをみて現在の血液中の鉄の状況を把握します。

TSAT=鉄/TIBC

一方でフェリチンは貯蔵されている鉄を反映しています。

鉄不足の時は

  • TSATが低下
  • フェリチンが低下

します。

一方で、特殊な病気がある場合(腎不全の時など)このTSATとフェリチンの動きが乖離することがあり、それらの所見がないかを確認することが可能です。

難しいので「へぇ~そうなんだ」で構いません。

鉄欠乏性貧血の治療

治療は鉄分を補充することです。

食べ物でも、サプリメントでも、内服薬でもなんでも問題ありません。

食事

食べ物だとレバー、ほうれん草、小松菜、カツオなどがあります。鉄分が含まれていればなんでも良いのでご自身でGoogleで検索して食べて頂けると良いかと思います。

またビタミンCを一緒にとると鉄分の吸収に良いと言われています。

鉄欠乏性貧血と食事についてはこちらをご参照ください。(現在執筆中です。)

薬としては、鉄剤を使用します。

  • フェロミア
  • フェルム など

また鉄の吸収をよくするためビタミン剤を一緒に飲んでいただくこともあります。

頻度は重症度によって決めていき、毎日飲む人や、週2回飲むようにしている人もいます。

定期的に採血をして鉄、フェリチンなどの状態を評価しています。

鉄剤は便通が悪くなったりする人もいるので適宜減量したり、予防のために胃薬や整腸剤を使う人もいます。

また便が黒くなりますが、こちらは特に問題ありません。

サプリメント

医薬品の鉄が身体に合わない時は、市販で売っている鉄のサプリメントを使用することも可能です。

実は、鉄には「非ヘム鉄」と「ヘム鉄」があります。

「非ヘム鉄」は胃腸障害をきたしやすいのが難点ですが、現在医療機関から処方できるのがこの「非ヘム鉄」しかありません。

そのため医療機関から処方された薬が合わない場合は、市販のサプリメントで「ヘム鉄」を選択頂くことが可能です。

市販のサプリメントを飲まれる場合は2点ご注意頂いております。

1つ目は、メーカーによって含まれる鉄の量が違うので1日あたり何ミリグラム飲んでいるかを把握して、主治医に伝える必要がある点。

例えば、DHCのヘム鉄は1錠5mgです。鉄欠乏性貧血が貧血がかなり進んでいる人は推奨量の2錠だと全然足りないです。

2つ目は、定期的に採血をする必要がある点。鉄を過剰に補充すると、肝臓を壊す可能性があります。

通常では薬が無くなる度に採血をするのですが、サプリメントだと医療機関に来なくなりがちなので、市販のサプリメントを飲まれる場合も数か月に1度採血で鉄の量や肝機能を確認しましょう。

鉄欠乏性貧血の治療のポイント

鉄欠乏性貧血の治療は「細く長く行う」のが原則です。

一度鉄を補充して改善しても、治療を辞めてしまうと再び貧血になります。

そのため当院に通院される患者さんには、1週間に2回の内服をして、4-6か月に1度は健康診断や当院で採血をして確認するように伝えています。

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